八味地黄丸(はちみじおうがん)は泌尿器系・生殖器系の病気に効果があります。中高年から高齢者だけに適応と思われがちですが、比較的若者にも使用できる漢方薬です。
目次
八味地黄丸はどんな人に効果がある?
八味地黄丸は男女を問わず中高年に適応が多い処方です。疲れやすい、または下半身の冷えがあって、夜間に何度もトイレに行ったり尿の出が悪いなどの排尿トラブルに利用されます。高齢者の尿漏れにも利用されることが多いです。
中高年のかすみ目や耳鳴り、めまいや頭重感などにも利用されます。また、高齢者で皮膚が乾燥してかゆい場合にも利用されることがあります。
前立腺肥大による排尿障害や中高年の勃起不全(インポテンツ)、性欲減退にもよく利用されます。若年者でも長期の病後や産後の排尿トラブルに利用出来ます。小児に利用することはほとんどないですが、おねしょに使われることもたまにあります。
八味地黄丸は腎気丸(じんきがん)とも呼ばれる通り、腎気を強める効果があります。
腎気は五臓の「腎」の機能を指し、腎機能のみを意味するのではなく、成長・発育・生殖を支配する臓器として、ホルモン内分泌系や生殖器系も含みます。いわば生命活動の根幹を担う内臓です。
腎気が衰弱すると腎虚(じんきょ)となり、内分泌系や生殖器系が衰え、泌尿器系に不具合が生じ、下半身の血流が悪化して、冷えやしびれ、逆にほてりが生じることもあります。
八味地黄丸が適応する証は、「腎陽虚(じんようきょ)」証です。腎が衰弱している腎虚であるため、足腰に力が出ない、だるい、疲労感、腰痛、頭のスッキリしない、忘れっぽい、動作が緩慢、めまい、耳鳴り、脱毛、性機能障害などの症状が特徴です。舌は白くて湿っぽい経口があります。
さらに虚寒の症状が現れて、下半身や手足の冷え、寒がり、顔色が白い、疲労感があり眠い、頻尿、尿量過多、下痢などの症状も伴います。
昼間は尿が少ないが、夜になると頻尿になる場合(夜間頻尿)や、排尿困難でむくみが引き起こされる場合もあります。
もう1つ、八味地黄丸は「腎陰陽虚(じんいんようきょ)」証にも効果を発揮します。
これは腎陽虚証に、腎陰虚証も合わさった証で、ほてり、ロ渴、いらいら、不眠、寝汗など虚熱の症状が同時にみられます。冬は手足が冷えるが、夏は逆にほてりやすいといったこともあります。
八味地黄丸は、一般に中高年以降の老化現象に伴う症状、特に泌尿器系や生殖器系の病態に多用されます。慢性腎炎ネフローゼ、膀胱炎、前立腺肥大、頻尿、尿失禁などの男性の性機能障害、しびれや痛みを伴う坐骨神経痛、椎間板ヘルニアに用いられます。白内障、緑内障などの眼疾患や、肌の乾燥によるかゆみにも使用します。糖尿病、高血圧、動脈硬化、自律神経失調症、健忘症、不妊症、無月経、更年期障害や、男性の性機能障害にも用います。
八味地黄丸といえば老人用の薬、あるいは老化防止の漢方薬と思われていることがありますが、若者でも、運動不足や食生活の乱れなどの悪い生活習慣で、容易に腎陽虚証に陥ることがあります。その場合は八味地黄丸を服用すると良い効果が出ることがあります。
この漢方薬を使う主な症状
八味地黄丸は、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿で、ときに口渴がある下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、かゆみ、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、尿漏れ、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、ノドの渴きなどに使われる漢方薬です。
八味地黄丸を使う主な症状は以下のようなものです。
白内障・緑内障などの眼疾患
肌の乾燥による皮膚搔痒症
糖尿病
高血圧
動脈硬化
自律神経失調症
健忘症
不妊症
無月経
更年期障害
泌尿器系障害(排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、尿漏れ)
坐骨神経痛・椎間板ヘルニア
八味地黄丸の処方
八味地黄丸は処方名の通り、8種類の生薬で構成され、地黄がメインの処方です。
八味地黄丸の配合生薬は、
①地黄
②山茱萸
③山薬
④沢瀉
⑤茯茶
⑥牡丹皮
⑦桂枝
⑧炮附子
の八味です。
君薬は地黄で、補血しつつ腎虚を補う効果があります。
臣薬は山茱萸、山薬、桂枝、炮附子です。山茱萸は腎と肝を補いつつ、必要なものが体外に漏れるのを防ぐ(固渋)効果があります。山薬は腎と脾を補います。山茱萸と山薬は君薬の地黄と一緒に滋養強壮し、下半身の衰弱を補う効能を発揮します。また桂枝は体を温めることで血液の循環を促進して気を巡らし、炮附子も体を温めてホルモン内分泌系や自律神経系を興奮させ、代謝を高める効果があります。
佐薬は沢瀉、茯爷、牡丹皮で、茯苓、沢瀉には利水効果があり、泌尿器系の機能を改善します。牡丹皮には血分の熱を冷まして血行を促す効果があります。沢瀉、茯爷、牡丹皮で君臣薬の流れを軽快にして体への負担を軽くする効能を持ちます。
この八味地黄丸の効能を「温補腎陽」といいます。
八味地黄丸の出典は、漢方の古典『金匱要略』です。
八味地黄丸の体験談・口コミ
口コミ①糖尿病に八味地黄丸
61歳の男性です。血糖値が高く、数年前に糖尿病と診断されました。通院して、食事療法や運動を心掛けていますが改善しません。だるさも気になります。夜間頻尿で、寝ている間に何度もトイレに起きるので睡眠を妨げられます。足の冷えもあります。
八味地黄丸を服用し、3力月ほどで頻尿などの自覚症状が改善し始め、1年後には血糖値も改善傾向になってきました。
口コミ②子供のおねしょに八味地黄丸が効きました
小学5年生の男の子ですが、いまだに週1回はおねしょをします。小さい頃から手足が冷たいとのこと。のどが渴くのか冷たい飲み物をよく飲みます。舌は白っぽい色をしており湿っています。
八味地黄丸を服用して2力月後に、おねしょの頻度が減り、3力月後にはほとんど夜尿をしなくなりました。手足も温かくなってきました。
口コミ③更年期障害に八味地黄丸
40代後半から更年期障害に悩まされています。イライラや冷え症が酷くなり、不眠もあります。
八味地黄丸を飲み始めて3か月程度で更年期障害の諸症状が緩和してきました。
八味地黄丸を使った製品の例一覧
散剤 | 八味地黄丸(料)エキス(クラシエ薬品、ツムラ)、オースギ八味地黄丸A(大杉)、JPS漢方顆粒-61号(ジェーピーエス製薬)、ケアテ顆粒A(ツムラ)、サンワロン顆粒(三和生薬)、腎陽温補散(松浦薬業)、八味地黄丸料エキス顆粒KM(一元製薬) | |
錠剤・カプセル・丸 | 八味地黄丸(料)エキス錠(大峰堂薬品工業、協同薬品工業、クラシエ薬品、小太郎漢方製薬、ジェーピーエス製薬)、ホノミカツジン錠(剤盛堂薬品)、サンワロン(三和生薬)、ベルアベ卜ン・リエイジEX錠(クラシエ薬品)、八味地黄錠(建林松鶴堂)、八味丸(ウチダ和漢薬、大峰堂薬品工業、第一薬品工業、大晃製薬、二反田薬品工業、日邦薬品工業、三星製薬)、八味地黄丸(大草薬品、クラシエ薬品、廣貫堂、阪本漢法製薬、三宝製薬、ジェーピーエス製薬、伸和製薬、ゼネル薬品工業、東洋薬行、湧永製薬)、蘭州金匮腎気丸(イスクラ産業・八ツ目製薬)、健康丸(栃本天海堂) | |
湯薬 | 八味丸料(ウチダ和漢薬)、八味地黄丸料(タキザワ漢方廠) |