苓桂朮甘湯(りょうけいじゅっかんとう)はめまい、動悸など上半身の痰飲に有効です。脾胃機能を調整しつつ痰飲を除去する効果があります。乗り物酔いなどにも使えます。
目次
苓桂朮甘湯はどんな人に効果がある?
苓桂朮甘湯は、めまいやふらつきが気になる場合に利用します。めまいは頭を動かすとグルグルと回る感じで、吐き気を伴うこともあるようなもので尿量は減少する傾向があるものに使用します。
手足や腰に冷えがあって、腹が張った感じ(胃に水が溜まっている感じ)のする人に適応が多いです。
乗り物酔いや目の腫れ(むくんでいる)、「キーン」と鳴る耳鳴りなどにも利用してみます。
甘くて服用しやすい処方なので、子どものめまいや立ちくらみに利用してみます(製品によっては小児用量のないものもあります)。
苓桂朮甘湯は、「痰飲、脾陽不足、水気上衝」証を改善する処方です。
痰飲は動悸、息切れ、咳嗽、胸苦しさ、胸の閉塞感、胸部がざわざわと落ち着かない感じ、不安感(心煩)、胸脇部の苦満感などが発生すること特徴です。喉が詰まっているような、張り付いているような違和感、異物感が生じることもあります。
頭部に至ると、めまい、立ちくらみ、耳鳴り、吐き気、嘔吐などがおこります。食欲不振、疲れやすい、体重が増えない、軟便などの症候もみられます。軽度の浮腫がみられることもあります。
舌は淡い紅色で大きく、白く湿った舌苔が付着することが特徴です。
これらは脾陽不足という虚証が根本にあり、そのために胃部に水液が停滞し、痰飲という実証を生み出している症状に、苓桂朮甘湯は効果的です。
この漢方薬を使う主な症状
苓桂朮甘湯は、めまい、ふらつきがあり、のぼせや動悸がある場合の立ちくらみ、頭痛、耳鳴り、動悸、息切れ、神経症、神経過敏などに使われる漢方薬です。
苓桂朮甘湯を使う主な症状は痰飲、脾陽不足、水気上衝の症候を現わす以下のようなものです。
自律神経失調症
めまい
慢性胃炎
胃・十二指腸潰瘍
胃下垂
胃アトニー
逆流性食道炎
狭心症
動悸、息切れ
慢性気管支炎
気管支喘息
慢性・急性腎炎
膀胱炎
頭痛、片頭痛
メニエール病
耳鳴り
低血圧
高血圧
起立性調節障害
アトピー性皮膚炎
帯下
苓桂朮甘湯の処方
苓桂朮甘湯の配合生薬は、茯苓、桂枝、白朮、甘草の四味です。
①茯苓
苓桂朮甘湯の君薬、茯苓は脾気を高め(健脾)、水湿を除去し(利湿)、水飲を取り除く効果があります(化飲)。水飲は尿として排泄されます。化飲が進めば尿量が増えます。茯苓は、桂枝と組み合わせることにより化飲効果が強まります。桂枝が陽気の通りをよくすること(通陽)により、水飲の流れがよくなるのです。五苓散という漢方薬にもみられる組み合わせです。
②桂枝
臣薬の桂枝は、温める効果(温陽)により、陰邪である水飲を除去し、偏った水のバランスを解消する効果があります。陽気を通して(温通陽気)気を降ろす効能があり、水気上衝に有効です。茯苓、桂枝ともに水飲や陽気を下降させるので、この2つの配合は水気上衝にも効果があります。茯苓、桂枝の組み合わせは桂枝茯苓丸が代表的です。
③白朮
白朮は佐薬として健脾利湿し、脾の運化機能を高めて湿邪を除去し、さらに痰飲が発生するのを防ぐ効能を持ちます。
④甘草
甘草は使薬として脾胃の機能を調えて気を補いつつ(益気和中)、それぞれの生薬の薬性を調和する役割があります。
これら苓桂朮甘湯の効能を「温陽化飲、健脾利湿」といいます。4つの生薬の相互効果により陽気を補い(本治)、過剰な痰飲を除去し、さらに水気上衝を改善し(標治)、本虚と標実の両方を改善する(攻補兼施)漢方薬となっています。
苓桂朮甘湯は、燥性が強いので、陰液が不足している体質(陰虚証)には使用できません。温性も強いので熱証への使用も控えます。
苓桂朮甘湯の出典は『金匱要略』『傷寒論』です。
苓桂朮甘湯の体験談・口コミ
口コミ①動悸とめまいで苓桂朮甘湯を飲みました
突発的な動悸とめまいが頻繁に起こります。胃腸が丈夫でなく、緊張、不安感が強いです。舌には白い舌苔が付いています。
苓桂朮甘湯で徐々に動悸とめまいが改善し、半年後にはほとんど起こらなくなりました。
口コミ②気管支喘息の発作が苓桂朮甘湯で良くなりました
気管支喘息があります。天気が悪くなるときや台風接近時などの低気圧の時にに発作が起こります。今も年に数回、発作があります。疲れやストレスがたまったときにも、呼吸が苦しくなります。
苓桂朮甘湯を服用して医年程度では発作がほとんど出なくなりました。
口コミ③乗り物酔いに苓桂朮甘湯
乗り物酔いがひどいです。仕事でバスに乗らなくてはいけなくなったのですが、毎日バス酔いに困っています。吐き気とめまいがあります。
苓桂朮甘湯を使用したところ乗り物酔いがかなり軽減しました。
苓桂朮甘湯を使用した製品の例一覧
散剤 | 苓桂朮甘湯エキス(クラシエ薬品、小太郎漢方製薬、三和生薬、全薬工業、ツムラ、東洋漢方製薬、松浦薬業)、JPS漢方顆粒-53号(ジェーピーエス製薬)、ストレージタイプZM(武田薬品工業)、天祐(建林松鶴堂)、苓桂朮甘湯エキス(一元製薬製薬、ウチダ和漢薬、三和生薬、東洋漢方製薬) |
錠剤・カプセル・丸 | 苓桂朮甘湯エキス錠(大峰堂薬品工業、小太郎漢方製薬、三和生薬、ジェーピーエス製薬、伸和製薬、日邦薬品工業)、レイジッ卜N(小太郎漢方製薬)、ホノミキジョウ錠(剤盛堂薬品)、錠剤苓桂朮甘湯(一元製薬) |
湯薬 | 苓桂朮甘湯(ウチダ和漢薬、タキザワ漢方廠、東洋漢方製薬、栃本天海堂)、角野薬師湯(角野製薬所) |