二陳湯(にちんとう)は気管支炎や胃炎、食欲不振などに使用される漢方薬です。異常な水液を取り除く基本処方です。
水は生きていく上で欠くことができないですが、時として体内に滞留し、体調に悪影響を与えることもあります。悪い生活習慣が日常化すると、過剰な水液が体内にたまりやすくなり、さらにストレスの影響でその流れが滞ります。
体内に水液が停滞した結果、様々な病気や症状が引き起こされます。二陳湯は、この異常な水液を取り除く効果があります。
目次
二陳湯はどんな人に効果がある?
二陳湯は胃の中に水が溜まった感じがして、吐き気や不快感のある場合に頓服で利用します。胃の不快感とともに咳や痰が出る場合にも利用します。痰は粘くなく、白くて薄いものが出る場合に使用します。
特に理由がはっきりしていなくて、吐き気や胃痛のある場合にも利用することが多いです。
二陳湯は、「湿痰(しったん)」証を改善する処方です。
湿痰は痰飲の一種です。痰飲とは、水液代謝の病理産物のことです。水液の代謝が正常に行われなくなると、水液が滞留し、痰飲が生じます。
粘りがある性質のものを痰、さらっとしたものを飲として区別する場合もあります。正常な水液は津液(しんえき)で、人に必要な基本物質ですが、水液が停滞して体内に貯留すると痰飲となり、人体の正常な生理活動を妨げ、心身に悪い症状が起こることになります。
痰飲には、湿痰、熱痰、燥痰、寒痰、風痰などの種類があります。
このうち、痰が白色で多く、咳が多い、胸苦しい、吐き気がする、嘔吐、めまい、動悸、手足がだるい、白い舌苔がべっとり、あるいは粘っこく付いている、など湿っぽい症候を伴う場合の痰飲を、湿痰といいます。
湿痰は、五臓の脾と肺の機能失調と結びついています。脾の機能失調により痰がたまり、肺の機能が悪化します。気道での分泌が増大し、咳や痰が出ます。湿痰の増加は清陽の流れを妨げるので、めまい、動悸が現れます。胃の機能も失調し、吐き気、嘔吐、腹部膨満感が起こることもあります。水湿が体内にたまることにより、手足がだるくなるような症状が出ます。
この漢方薬を使う主な症状
二陳湯は悪心、嘔吐がある胃部不快感、慢性胃炎、二日酔い、吐き気や胃の不快感、胃の痛み、二日酔いで胃が気持ち悪い、痛いなどに使われる漢方薬です。
二陳湯を使う主な症状は以下のようなものです。
慢性・急性気管支炎
肺気腫
慢性・急性胃炎
胃・十二指腸潰瘍
胃痛
妊娠悪阻
吐き気
心因性嘔吐
食欲不振・消化不良
胃下垂
二日酔い
不眠症
帯下
二陳湯の処方
二陳湯の配合生薬は、
①半夏
②陳皮
③茯苓
④甘草
⑤生姜
の五味です。
半夏は君薬として燥湿化痰(そうしつけたん)、降逆和胃(こうぎやくわい)する効能があります。鎮咳効果もあります。
臣薬の陳皮は燥湿祛痰して半夏を助け、さらに気を巡らせて痰を出なくさせます。半夏と同じく、制吐効果もあります。胃腸の蠕動(ぜんどう)運動も助ける効果があります。
「陳」には古いという意味があり、半夏と陳皮は古いものほど良いとされています。
佐薬の茯苓は健脾滲湿(けんぴしんしつ)して脾の機能を調え、痰の生成を抑える効果があります。同じく佐薬の生姜も脾胃に作用して降逆化飲し、半夏の毒性を抑えながら、半夏と陳皮の行気消痰効果を助け、和胃止嘔する効能を持ちます。
甘草は使薬としてそれぞれの生薬の薬性を調和し、潤肺和中(じゅんぱいわちゅう)する効果があります。
これらの、二陳湯の効能を「燥湿化痰、理気和中」といいます。
なお二陳湯は燥性が強いため、空咳が出る、痰がからみやすく粘っこい痰に血が混じるなど陰虚証の人には使用できません。
二陳湯の出典は中国の処方集『和剤局方』です。もともと二陳湯は陳皮の代わりに橘紅(きっこう)が使われ、さらに烏梅(うばい)も配合されています。烏梅は佐薬として収斂効果を持ち、正気の消耗を防ぎます。
二陳湯の体験談・口コミ
口コミ①ストレスによる不眠症に二陳湯
不眠症で、なかなか寝付けません。ス卜レスで過食気味でもあります。
ニ陳湯を服用して、不眠症を改善しました。過食もおさまりつつあります。
口コミ②小児喘息の息子に二陳湯
息子が小児喘息で、ひどいときは咳込みがしばらく続きます。虚弱体質で胃腸が弱く、風邪を引きやすいです。
二陳湯を1年飲み続けてさせたところ、すっかり喘息の症状が改善しました。
口コミ③胃腸炎・食欲不振に二陳湯
酷い胃腸炎で食欲不振が続いています。仕事でストレスを感じているためかもしれません。
二陳湯を服用して2か月程度で食欲が戻り始めました。胃腸の荒れも治まってきたようです。
二陳湯を使った製品の例
散剤 | 二陳湯エキス顆粒(クラシエ薬品) |