温胆湯(うんたんとう)は胃腸が弱い人の神経症や不眠症などを改善する漢方薬です。胆と胃の機能不調による痰熱を解消する効果があります。
目次
温胆湯はどんな人に効果がある?
温胆湯は、いつも胃の不調を訴えている人の不眠、神経症などに効果があります。長期入院や大きな病気をした後は胃の働きが悪いため、不眠がある場合にはこの処方を利用してみると良いでしょう。
温胆湯は、「胆胃不和、痰熱内擾」証を改善する処方です。
「痰熱内擾」は、脳や自律神経系が興奮しやすい状態です。驚きやすい、疲れているのに気が高ぶって落ち着かない、不安、不眠、寝つきが悪い、夢をよく見て眠りが浅い、早く目が覚める、などの症状が特徴です。いらいら、動悸、胸苦しい、めまいが生じることも多いです。痰熱内擾が非常に悪化すると、てんかんの発作、幻聴や幻覚が起こることもあります。
「胆胃不和」は、胃気の機能が悪化することにより、吐き気、嘔吐、ロが苦い、ロの粘り、しゃっくりなどの症状がみられます。舌には黄色い舌苔が付くことが特徴です。
この漢方薬を使う主な症状
温胆湯は、胃腸が虚弱なものの不眠症、神経症、イライラなどに使われる漢方薬です。
温胆湯を使う主な症状は、痰熱内擾や胆胃不和を現わす以下のようなものです。
自律神経失調症
不眠症
神経症
更年期障害
急性・慢性胃炎
慢性気管支炎
メニエール病
虚血性心疾患
高血圧
てんかん
ノイローゼ
うつ病
温胆湯の処方
温胆湯の配合生薬は、
①半夏
②竹茹
③枳実
④陳皮
⑤茯苓
⑥甘草
⑦生姜
の七味です。
温胆湯の君薬は半夏で、燥湿化痰、降逆和胃する効果があります。
微寒性の竹茹は臣薬として清胆和胃し、嘔吐を解消する効能があります。脳や自律神経系の興奮を鎮め、精神的な落ち着きを取り戻させる役割があります。
佐薬の枳実と陳皮は理気、化痰します。痰飲が消滅させる効能を持ちます。制吐効果や、胃腸の蠕動(ぜんどう)を助ける働きもあります。同じく佐薬の茯苓は健脾利湿して牌の機能を調え、痰の生成を抑える効果があります。同時に鎮静効果もあります。生姜も佐薬として脾胃に効果して降逆化飲しながら、半夏の毒性を緩和し、半夏と陳皮の行気消痰効果を補助し、和胃止嘔する効果があります。
甘草は使薬としてそれぞれの生薬の薬性を調和し、益脾和中する役目を担います。
これらの温胆湯の効能を「理気化痰、清胆和胃」といいます。胆と胃が調和を取り戻し、痰熱が除去されて脳や自律神経系が安定を取り戻し、不眠や動悸、驚きやすいなどの症状が改善していく効果があります。
温胆湯の出典は宗代(12世紀)の医学書『三因極一病証方論(三因方)』です。
温胆湯に似た漢方薬
温胆湯は、ニ陳湯に枳実と竹茹を加えた配合です。
ニ陳湯の燥湿化痰、和胃止嘔効果に、竹茹の清胆和胃、さらに枳実の理気効果が合わさることにより、ニ陳湯にはない鎮静効果が生まれるため、胆胃不和、痰熱内擾証の不眠症や神経症に使われる漢方薬です。ニ陳湯が基礎なので、胃腸が丈夫でない方でも使うことができます。
ここで、温胆湯に似た処方の漢方薬を2つご紹介します。
竹茹温胆湯
竹茹温胆湯は、温胆湯に柴胡、黄連、香附子、桔梗、麦門冬、人参を加えた処方です。温胆湯よりも熱証が強い痰熱内擾証に良いといわれています。同じ不眠症でも、いらいら、怒りっぽいなどの熱の症候が強く、気分がスッキリしない場合に用います。風邪やインフルエンザで高熱が出た状態にも使います。
加味温胆湯
加味温胆湯は、温胆湯に酸棗仁、遠志、人参、地黄、玄参、大棗を加えた処方です。温胆湯と同じく不眠症に使うことが多いですが、精神安定効果が強化されているため、温胆湯を使う人よりも弱々しく、恐怖心や不安感が強く、すぐにびっくりしてしまうような方に使われることが多いです。
温胆湯の体験談・口コミ
口コミ①不眠症で寝つきが悪いです
不眠症で、なかなか寝つけないことに悩んでいます。夢を見ることが多く、眠りも浅いです。些細なことで飛び上がるくらい驚くことが多いです。
温胆湯を飲んで1年ほどで、しっかり眠れるようになりました。驚くことも少なくなりました。
口コミ②イライラが温胆湯で改善
すぐにイライラします。気が小さい方です。痰が多く、ロが苦いです。舌はうっすら黄色くなっています。
温胆湯を服用し、半年ほどでイライラが少なくなりました。
口コミ③動悸や驚きやすさに温胆湯
神経質で物音などに良く驚きます。動悸がよく出ることに困っています。最近は眠りの浅さも気になっています。舌には黄色っぽい舌苔が付いています。
温胆湯を3か月程度飲んで、動悸や驚きやすさが改善しました。眠りもしっかりとれている実感があります。
温胆湯を使用した製品の例
温胆湯の製品には、黄連・酸棗仁が入っていない製品(小太郎漢方製薬)と入っている製品(イスクラ産業、東洋漢方製薬)があります。不眠が強い場合には入っている処方から利用してみるとよいでしょう。
散剤 | 温胆湯エキス(イスクラ産業、小太郎漢方製薬) | |
湯薬 | 温胆湯(東洋漢方製薬) |