呉茱萸湯(ごしゅゆとう)は胃の冷えを除去しつつ胃の機能を改善する効果があります。嘔吐や頭痛など濁陰の上逆に有効な漢方薬です。
呉茱萸湯のメインの生薬「呉茱萸」はミカン科の低木ゴシュユの果実で、独特の強い香りがあり、体を温める強い効果があります。
呉茱萸が配合されている処方を使うかどうかの判断は、冷えを伴う症状(寒証)があることです。呉茱萸湯は、熱証のある人には使ってはいけません。
目次
呉茱萸湯はどんな人に効果がある?
呉茱萸湯は、吐き気と頭痛と手足の冷えがあれば、とりあえず利用するという使い方が一般的です。頭痛や吐き気がなくても、胃酸がよく上がる場合に利用されます。
味はよくないので、飲みにくい場合はエキス剤は溶かさずそのまま水かぬるま湯で服用します。
呉茱萸湯は、「胃中虚寒(いちゅうきょかん)、濁陰上逆(だくいん じょうぎゃく)」証を改善する処方です。
胃は六腑の一つで、飲食物を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、食べた物を人体に有用な形に変化させます。さらに飲食物の有用な部分(清陽)を脾に渡した後、残りのかす(濁陰)を小腸・大腸に下ろします(降濁)。
この胃の機能が衰えているところに、寒邪の刺激が加わった状態が 「胃中虚寒」です。
胃中虚寒になると、胃の降濁機能が弱まり、濁陰を下降させることができなくなります。そして濁陰が胃から上部に上がってくる。これが「濁陰上逆」証です。
胃の機能が低下し、冷やされることにより、蠕動運動が弱まり、胃の中の物が押し上げられる状態です。
この漢方薬を使う主な症状
呉茱萸湯は手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するような頭痛、頭痛に伴う吐き気・嘔吐、しゃっくり、冷えると痛む頭痛、片頭痛、急に起こる吐き気で手足が冷たくなるものなどに使用されます。
呉茱萸湯を使う主な症状は、胃中虚寒、濁陰上逆の症候を呈する以下のようなものです。
慢性・急性胃炎
胃・十二指腸潰瘍
胃下垂、胃拡張
胃酸過多
逆流性食道炎
肝炎
片頭痛、神経性頭痛
メニエール病
自律神経失調症
しゃっくり
呉茱萸湯の処方
呉茱萸湯の配合生薬は、
①呉茱萸
②人参
③生姜
④大棗
の四味です。
君薬の呉茱萸は熱性が強く、肝・腎・脾・胃に帰経(きけい)します。まず胃を温めて嘔気や嘔吐を止め、次に肝を温めて上逆を下ろし(降逆)、正常化します。そして賢を温めて嘔吐と下痢を止める。このように呉茱萸は一つで幅広い薬効があります。
また生姜は臣薬として胃を温め、寒気を散らし(温胃散寒)、降逆して嘔吐を止め、君薬の呉茱萸の働きを助けます。
胃気が上逆して下降できないため、脾気も正常な上昇ができなくなっています。そこで人参が佐薬として脾気を補い(補脾益気) 、虚している脾胃の機能の回復を助けます。
大棗は使薬として補脾益気しつつ、それぞれの生薬の薬性を調和します。さらに人参の効果を助け、生姜
との配合により脾胃の機能を調和させます。
以上、呉茱萸湯の効能を「温中補虚、降逆止嘔」といいます。四味の生薬の相互効果により、胃を温めて胃の機能を補い、濁陰の上逆を解消します。
呉茱萸湯の出典は漢代の古典『傷寒論』です。
呉茱萸が配合されているのは呉茱萸湯以外に、温経湯や当帰四逆加呉茱萸生姜湯などがあります。温経湯は、冷えと血行不良と血虚があるときに使用します。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、冷えと血虚がある場合に用います。そして呉茱萸湯は、胃部の冷えを伴うような症状に使用します。
呉茱萸湯の体験談・口コミ
口コミ①胃の調子が悪く食欲不振
食欲がなく、少し食べても胃が張っています。無理して食べると嘔吐することもあります。疲れやすく寒がりで、お腹と足が冷えます。唾液が多く、舌苔が湿っぽいです。
呉茱萸湯を服用して、半年ほど経つと、諸症状が改善しました。
口コミ②片頭痛に呉茱萸湯
月に何度か片頭痛の発作が起こります。疲れたときや生理前にひどくなります。発作時は酷い痛みで、手足が冷え、嘔吐し、じっとしていられないときもあります。
呉茱萸湯を始めてしばらくすると、片頭痛発作が減り、半年後には発作がほとんどなくなりました。
口コミ③しゃっくりに呉茱萸湯
しゃっくりがなかなか止まらないことに悩んでいます。色々な止め方を試してみましたが、1時間くらい止まらないこともあるので大変です。
呉茱萸湯を服用し始めたところ、しゃっくりの頻度が減りました。
呉茱萸湯を使った製品の例
散剤 | 呉茱萸湯エキス(クラシエ薬品、松浦)、ホノミカンタン粒(剤盛堂薬品) | |
湯薬 | 吳茱萸湯(ウチダ和漢薬、タキザワ漢方廠) |