補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は様々な病気の根本にある消化器系の不調を改善する漢方薬です。消化吸収機能のバックアップで気を補いシャキッとさせる漢方薬です。
悪い食習慣や暴飲暴食、ストレスや不安、さらに過労や睡眠不足などで、胃腸機能を弱めている人は多いものです。そんなときに補中益気湯が使われます。
胃の王道とされることから、別名「医王湯」という呼び方もあります。
目次
補中益気湯はどんな人に効果がある?
補中益気湯は、疲れを回復するための処方で、特に食事がおいしくない、食べたくないという場合によく効きます。
基本的には、高齢者や病中・病後、産後などで声や目に力がなく、手足がぐったりしているような人に適応がありますが、何となく疲れがある、食後に眠くなる場合などにも利用出来ます。熱いものを食べたり飲んだりするのを好む傾向がある人に使用されます。
疲労が溜まって息切れや寝汗があるとき、慢性的な下痢、食欲不振、高齢者のかぜひきなどに利用します。また、痔や疲労時の不正出血、勃起不全(インポテンツ)に利用します。
食欲不振などは服用して数日で改善することもありますが、疲労回復などには長期に利用する必要があることが多いです。
補中益気湯の「中」は中焦(ちゅうしょう)、つまり体の中央部分、脾胃(ひい、胃のこと)の機能を指します。補中益気湯が適応する証は主に3つあります。
「脾胃気虚(ひいききょ)」証
脾胃気虚とは、消化吸収機能が低下しており、食べ物が体のエネルギーにならない体質のことです。食が細く、体、特に四肢がだるく疲労倦怠感が強いことが多いです。すぐに息切れをするようになります。また、食後にすぐ眠くなります。便は軟便か、もしくは反対に便秘になる場合もあります。
「気虚下陥(ききょげかん)」証
気虚下陥は、気虚であるために内臓を引き締めてあるべき場所に保つ力が弱くなり、また必要なものがあるべき場所から漏れ出やすいです。胃下垂、脱肛、ヘルニア、子宮下垂や子宮脱、月経過多、不正出血、めまいや立ちくらみ、発汗、慢性的な下痢などの症状が特徴です。
「気虚発熱(ききょはつねつ)」証
気虚発熱は、体力が低下しているせいで熱の発散が出来ず、熱が体内にこもって浮いてくることを言います。微熱、ほてり、発汗などの症状が現れます。喉は渴きますが、冷たいものより温かい飲み物を好むことが多いです。疲れたときに症状が悪化しやすくなるのが特徴です。
この漢方薬を使う主な症状
補中益気湯は元気がなく、胃腸のはたらきが衰えて、疲れやすい傾向にあるようなの虚弱体質、疲労倦怠、病後・術後の衰弱、食欲不振、寝汗、感冒(風邪)などに使われる漢方薬です。
胃腸がくたびれて体の力が抜け、手足や内臓が下に垂れ下がっているような人に効きます。
かぜを引きやすい、めまい、眼精疲労、口内炎、手足のしびれがある人、食後にすぐ眠くなるような人にもよいです。病中病後や手術前後、妊娠中や産後の体力保持、あるいは老化防止にも適しています。
低血圧
起立性調節障害
自律神経失調症
頭痛
慢性胃炎
慢性肝炎
遊走腎
不妊症
性機能障害
疲労倦怠感
食後の眠気
病後・術後の衰弱
補中益気湯の処方
補中益気湯は、
①黄耆
②人参
③甘草
④白朮
⑤陳皮
⑥当帰
⑦升麻
⑧柴胡
⑨生姜
⑩大棗
の十味からなります。
君薬の黄耆は、中焦を補い、体表を固めて補気升陽(ほきしょうよう)します。補気升陽は気虚下陥証を改善する働きのことで、黄耆は補中益気湯のメインの存在です。
臣薬は、人参・甘草・白朮の三薬で、気を補い、脾の機能を高める効能があります。黄耆との組み合わせで補中益気の効能を強める効果もあります。黄耆と人参の組み合わせは補気に非常に良い効果を見せます。半夏白朮天麻湯や清心蓮子飲にも使われる組み合わせです。黄耆と人参に当帰を加えると、さらに強い補気補血効果を発揮してくれます。この3つの生薬は、帰脾湯、十全大補湯、人参養栄湯、当帰湯、清暑益気湯などの補剤に配合されています。
佐薬は、当帰と陳皮です。当帰は気とともに失われる血を補って、また陳皮は気の流れをスムーズにしてそれぞれの生薬の働きを助けます。胃の働きを高める効果もあります。
升麻と柴胡は少量だと升陽効果があり、中焦で君薬を助ける佐使薬となります。そして甘草・大棗・生姜は使薬として健牌しつつそれぞれの生薬の調和する効果があります。
これらの補中益気湯の効能を「補中益気、升陽挙陥、甘温除熱」といいます。
補中益気湯の出典は『脾胃論』です。
補中益気湯の体験談・口コミ
口コミ①補中益気湯で低血圧やめまいが改善
昔から血圧が低く、特に朝が苦手で、めまいやふらつきが起こります。疲れやすく、胃弱で食欲はあまりありません。冷え症で手足が冷たいです。少しの運動で動悸や息切れもします。
補中益気湯を服用し、3力月ほどでめまいや血圧が改善されつつあります。疲れにくくもなってきたように感じます。
口コミ②熱っぽく、疲れやすいです
しばらくずっと微熱があり、体がだるくてすぐに疲れてしまいます。目のかすみや乾燥、ロ、鼻の渴きを感じます。日常的に食欲不振です。
補中益気湯を6力月服用していずれの症状も緩和しました。
口コミ③胃弱で食後にすぐ眠くなる症状に補中益気湯
元々胃が弱く、食事をとると直後に眠くなる体質です。風邪もひきやすく、疲労感とだるさはいつもあります。
補中益気湯を1年ほど飲んだところ、胃弱が改善され、食後の眠気が軽減しました。疲労感も減ったように感じます。
補中益気湯を使用した製品の例一覧
散剤 | 補中益気湯エキス(クラシエ薬品、小太郎漢方製薬、三和生薬、ツムラ、東洋薬行、松浦薬業)、保中回帰(ウチダ和漢薬)、モリエーポン(大杉製薬)、療方昇陽顆粒(クラシエ薬品)、JPS漢方顆粒-46号(ジェーピーエス製薬)、悦我(太虎精堂製薬)、調寿(建林松鶴堂)、補中益気湯エキス(一元製薬、ウチダ和漢薬、三和生薬、東洋漢方製薬、東洋薬行) |
錠剤・カプセル・丸 | 補中益気湯エキス錠(大峰堂薬品工業、クラシエ薬品、小太郎漢方製薬、三和生薬、ジェーピーエス製薬、伸和製薬、日邦薬品工業、ロート製薬)、ワカゲン錠(クラシエ薬品)、ホエキンN(小太郎漢方製薬)、ホノミホイオー錠(剤盛堂薬品)、錠剤補中益気湯(一元製薬) |
液剤 | JPS補中益気湯液(ジェーピーエス製)、漢方濃縮煎剤補中益気湯(松浦薬業) |
湯薬 | 補中益気湯(ウチダ和漢薬、タキザワ漢方廠、東洋漢方製薬) |