芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)は冷え症の貧血、月経不順、不正性器出血など主に女性に使用される漢方薬です。止血養血して月経や妊娠状態を安定させる効果があります。
身体には経絡(けいらく)という通路が至る所にあります。芎帰膠艾湯は、経絡のうち、女性の生理と関係が深い経絡の機能が失調して生じる病気などを改善する漢方薬です。
目次
芎帰膠艾湯はどんな人に効果がある?
芎帰膠艾湯は、冷えのある女性で、経血が多かったり月経が長く続く場合によく利用されます。
製品によっては阿膠の代わりにゼラチン(阿膠の主成分はゼラチン)を使っているものもあるが、効果にはあまり違いがないと考えられます。
芎帰膠艾湯は、「衝任虚損(しょうにんきょそん)、出血胎動」証を改善する処方です。
衝任虚損になると、不正性器出血が生じたり、胎児が不安定になったりします。これを「出血胎動」と呼びます。流産を繰り返す体質とも関係があると言われています。
血を血脈内にとどめることができなくなり、不正性器出血、過多月経、月経期間の延長などを引き起こします。また妊娠中の子宮出血、流産後の子宮出血などもみられます。出血は比較的少量で継続的なことが多いです(漏下)。その他、血便や血尿など、下半身で出血などもみられやすいです。
出血により体内の血が失われると、血虚(けっきょ)証になります。人体の隅々にまで血液や栄養が供給されなくなり、必要なところに必要な滋養分が供給されない体質や状態です。妊娠中に血虚証になると、胎児に栄養がいかず、胎動不安になります。血虚と出血により、腹痛が起こることもあります。
舌は赤みが薄く、白っぽい色をしていることが特徴です。
この漢方薬を使う主な症状
芎帰膠艾湯は、冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のない、痔出血、貧血、月経異常・月経過多・不正出血、皮下出血、冷えや貧血のあるタイプの下半身からの出血(月経過多や痔出血)などに使われる漢方薬です。
芎帰膠艾湯を使う主な症状は、衝任虚損、出血胎動、血虚の症候を現わす以下のようなものです。
不正性器出血
月経過多
切迫流産
産後の出血
不育症
血小板減少性紫斑病
血便
血尿
痔出血
貧血
冷え症
芎帰膠艾湯の処方
芎帰膠艾湯の配合生薬は、
①阿膠
②艾葉
③地黄
④当帰
⑤芍薬
⑥川芎
⑦甘草
の七味です。
芎帰膠艾湯は、四物湯に阿膠、艾葉、甘草が加えられた配合になっています。
君薬の阿膠は止血効果があり、また血を補い、陰液を養う効能があります(補血養陰)。
同じく君薬の艾葉にも止血効果があり、胎児を安定させ、流産を予防する効果(安胎)や、止痛効果もあります。阿膠と艾葉の組み合わせで温経止血し、補血安胎します。
臣薬の地黄は滋陰養血して衝任脈を補養し、安胎する効果があります。同じく臣薬の当帰は補血して月経を調整(調経)し、衝任脈を養う効果があります。
佐薬は芍薬、川芎、甘草です。芍薬は補血し、肝(かん)の機能を調える効果があります(平肝)。筋肉の緊張を緩和して鎮痛に働き(緩急止痛)、止血効果もあります。川芎は気血の流れを調える効果を持ちます(活血行気)。当帰、芍薬は卵巣機能を改善し、月経を調整します。甘草は脾胃の機能を高めて、阿膠との組み合わせにより止血効果を高める効果、芍薬との組み合わせにより緩急止痛を強める効果を持ちます。甘草は使薬としても働き、それぞれの生薬の薬性を調和させます。
これらの芎帰膠艾湯の効能を「止血養血、調経安胎」といいます。
温性が強い処方なので、冷え症に適しており、熱証のある出血には使用しません。
芎帰膠艾湯の出典は『金匱要略』です。
芎帰膠艾湯の体験談・口コミ
口コミ①月経過多と冷え性
月経過多に困っています。生理が長く続きます。生理周期は安定していますが、出血が続き、止まりません。貧血で、冷え症です。舌は白っぽいです。
芎帰膠艾湯を飲んで半年くらいから改善し始め、出血量が減り、貧血もなくなりました。
口コミ②おりものと生理痛で芎帰膠艾湯を飲みました
生理の前後に茶色いおりものが出ます。鎮痛剤が必須なほど生理痛が強いです。手足が冷えやすいです。
芎帰膠艾湯を3力月間服用し、生理痛も軽くなり症状が改善しました。
口コミ③冷え症と貧血
冷え症が酷く、貧血や立ちくらみもたまにあります。月経周期は正常ですが、血の量は多いです。舌はやや白いです。
2か月程芎帰膠艾湯を飲んだところ、それぞれの症状が良くなりました。
芎帰膠艾湯を使用した製品の例
散剤 | 芎帰膠艾湯エキス(松浦薬業)、芎帰膠艾湯エキス(一元製薬、東洋漢方製薬、東洋薬行) |
錠剤・カプセル・丸 | 錠剤芎帰膠艾湯(一元製薬) |
湯薬 | 芎帰膠艾湯(ウチダ和漢薬、東洋漢方製薬) |