炙甘草湯の効果効能 動悸、息切れ、不整脈などの心疾患、バセドウ病などに

炙甘草湯 効果効能

炙甘草湯(しゃかんぞうとう)は動悸、息切れなどの循環器疾患などに使用される漢方薬です。胃腸が虚弱で下痢しやすい場合などにも使われます。脾気を補い湿邪を除去します。

炙甘草は、甘草を炙ったものです。甘草の役割は、ほとんどの漢方薬の場合、使薬として配合されている生薬の薬性を調和するという比較的地味なものですが、炙甘草湯ではメインの君薬として重要な役割を果たします。

炙甘草湯はどんな人に効果がある?

炙甘草湯は動悸や息切れが気になる場合に利用されます。あまり元気がなく、便秘気味の人に適応があります。

阿膠の代わりにゼラチン(ゼラチンは阿膠の主成分)の入っている処方もありますが、効能の違いはあまりないと考えられています。

炙甘草湯は、「心気陰両虚」証を改善する処方です。

人の体を構成するのは、気・血(けつ)・津液(しんえき)です。これを陰陽に分けると、気が陽、血と津液が陰となります。それぞれを陽気、陰血と呼びます。この陽気と陰血との陰陽バランスが良いときに人間は健康でいられます。

しかし、これらのバランスを崩し、量が少ない場合や流れが悪い場合は、体調が悪化し病気となります。

五臓の心(しん)において、この陽気と陰血が不足した状態にある証が「心気陰両虚」です。

心の機能は、心臓を含めた血液循環(血脈)と、人間の意識や思考など、高い次元の精神活動(神志)を司ることです。

このうち血脈の機能で陰血が不足すると、血脈が満たされません。また陽気が虚弱になると、鼓動を続ける力が弱まります。この結果、脈拍が不規則に、あるいは規則的に乱れ(脈の結代)、不整脈、動悸が引き起こされます。陽気虚弱は、心臓のポンプ機能そのものが弱まっている状態です。

心気が不足すると、息切れが生じます。ちょっと動くだけで、じわりと汗が出てくる(自汗)。疲れやすく、息苦しさも出てきます。

また、心血が虚すと、神志を司る心の機能も低下して、イライラしたり、落ち着かない不安感・不快感(心煩)が起こったりします。不眠が起こることもあります。

陰血不足が肺から上に及ぶと、乾咳や喉の渴き、ロの渴きが起こります。陰血不足が腸に至ると便が乾燥し、便秘となります。夜は陰がつかさどる時間帯なので、夜に陰血不足で陽が抑えられずに盛んになると、寝汗が出ます。皮膚の乾燥や、手足のほてり(煩熱)も起こります。吐く息が熱いと感じることもあります。

舌も乾燥しており、厚みがなく、痩せていることが多いです。。舌の色は白っぽく(気虚や血虚の特徴)、舌苔は少ないか、あるいは付着していないことが多いです(陰血不足の特徴)。

この漢方薬を使う主な症状

疲れやすく、ときに手足のほてりなどがある動悸、息切れ、脈のみだれなどに使われる漢方薬です。

炙甘草湯を使う主な症状は、心気陰両虚の症候を現わす以下のようなものです。

狭心症

不整脈(脈のみだれ)

動悸、息切れ

心筋炎

心臓神経症

心悸亢進

心臓弁膜症

甲状腺機能亢進症・バセドウ病

貧血

肺結核

自律神経失調症

高血圧

炙甘草湯の処方

炙甘草湯の配合生薬は、

①甘草

②生姜

③桂枝

④人参

⑤地黄

⑥阿膠

⑦麦門冬

⑧麻子仁

⑨大棗

の9味です。

君薬の甘草は、あぶった甘草を用います。甘草は心の陽気を補う力が強いです。気を補う(益気)ことにより、血も生じる効能があります。同じく君薬の地黄には、陰血を養う効果があります(滋陰養血)。地黄は五臓の不足を補い、血脈を通わせ、気力を増す生薬です。

臣薬の人参は、心の陽気を補うと同時に五臓の脾と肺の気も補い、さらに津液を生じさせる(生津)ことにより、炙甘草を補助する効能があります。同じく臣薬の麦門冬は、肺の陰血を補い(養陰潤肺)、心の機能を整え、心煩を取り除き(清心除煩)、地黄を補佐する効能があります。阿膠と麻子仁も、臣薬として陰血を補い、血脈を満たします。麻子仁には便通を良くする働きもあります。

佐薬の大棗は、心と脾の気を補い、精神を安定させる効果があります(安神)。

同じく佐薬の桂枝と生姜は温性の生薬で、心の陽気を温めて(温陽)、血脈を通じさせる効能を持ちます(温通血脈)。血管拡張効果があり、冠動脈も拡張させます。

人参と麦門冬の組み合わせは、滋潤効果を強め、五臓の気を改善することが出来ます。生姜と大棗の組み合わせは、胃腸の消化吸収機能(脾胃)を活性化さる効果を発揮します。

以上、炙甘草湯の効能を「益気滋陰、温陽復脈」といいます。

これらの配合により、陰血が補われて血脈が満たされ、陽気が補われて血脈の機能が回復します。冠動脈を含め、全身を流れる血液量が増え、心臓のポンプ機能が回復し、血液循環が平常の状態を。

気血が充足され、陰陽が調和し、動悸や脈の結代が消えることから、炙甘草湯を「復脈湯(ふくみゃくとう)」と呼ぶこともあります。

炙甘草湯の出典は『傷寒論』です。炙甘草湯は元来、酒も加えて煎じる処方です。酒には温通血脈効果があり、炙甘草湯の効果を体内に行き渡らせる役割を果たします。

炙甘草湯の体験談・口コミ

口コミ①不整脈に炙甘草湯

病院で心臓肥大と診断されています。不整脈で、動悸、息切れがあります。胸痛がすることもあります。動悸は、運動後に現れやすいです。倦怠感もあります。

炙甘草湯を使用しはじめて半年後には、不整脈はやや残るものの息切れや疲れやすさはだいぶ改善しました。

心気陰両虚とみて炙甘草湯を使用した例。

口コミ②バセドウ病の動悸に炙甘草湯

バセドウ病の内服治療をしています。最近、動悸、息切れがするようになりました。疲れやすく、倦怠感が強いです。

炙甘草湯を服用し始めて3力月後には動悸が治まってきました。

心気陰両虚とみて炙甘草湯を使用した例。

口コミ③胃腸炎や下痢に炙甘草湯

胃腸炎で下痢が長引いています。お腹の痛みや不快感が数か月続いています。疲労感もあります。

炙甘草湯を服用して1か月後に胃腸炎が改善して、下痢が治まりました。

炙甘草湯を使った製品の例

散剤 炙甘草湯エキス(松浦薬業)、ホノミシンキ粒(剤盛堂薬品)
湯薬 炙甘草湯(ウチダ和漢薬、東洋漢方製薬)

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