平胃散(へいいさん)はその名の通り胃の症状、消化器系疾患や、湿邪による症状に効く漢方薬です。
病気の原因の一つに、湿気(湿邪)があります。湿気は人の体の至る所で生理機能の邪魔をし、例えば関節に湿気が過剰にたまれば関節痛を引き起こし、頭部で湿気が滞れば頭痛の原因となり、下肢に過剰に湿気が来るとむくみとなります。
脾胃の湿邪を取り除き、胃腸機能を改善するのが平胃散です。
目次
平胃散はどんな人に効果がある?
平胃散は、胃の不快感(痛みや膨満感)がある場合に利用します。吐き気があったり下痢をしていても利用出来ます。
食べると腹がゴ口ゴロ鳴って、すぐに下痢をするような場合に利用されることが多いです。食後、みぞおちのあたりが痛む場合に利用されます。
平胃散は、「湿困脾胃(しつこんひい)」または「湿滞脾胃(しつたいひい)」証を改善する処方です。
脾に湿邪が過剰にたまると、機能が阻害されます。こうなると消化器系の機能が低下し、湿邪が全身にあふれ、様々な症候が引き起こされます。これが「湿困脾胃」証、「湿滞脾胃」証です。
湿邪には外湿と内湿があります。
外湿は外界の湿邪で、梅雨など湿気の多い季節や、湿度の高い地域での生活や仕事の環境で起こります。一方、内湿は体内の水分代謝の障害により発生する湿邪で、脾胃の運化機能の低下などにより起こります。食べ過ぎや飲み過ぎ、冷たい物、消化しにくい物を摂り過ぎると、脾胃に湿邪が溜まります。
湿困脾胃、湿滞脾胃では、上腹部に膨満感があり、食欲不振、胃もたれ、吐き気、嘔吐、げっぷ、腹痛などの症状が生じます。酸っぱい胃酸がロの中にまで上がってくること(呑酸)や、胸のつかえ、咳、痰、動悸、味覚鈍化が見られる場合も考えられます。
また、湿邪には重く滞るという性質があるので、倦怠感、手足が重だるい、横になりたがる、眠くなりやすい、下痢をする、おりものが多いなどの症状もあります。
舌には白く厚い舌苔が付着していることが特徴です。
平胃散は燥性が強いので、陰虚の人や、胃腸が虚弱な人、妊婦には使用してはいけません。
この漢方薬を使う主な症状
平胃散は、胃がもたれて消化が悪く、吐き気、食後に腹が鳴って下痢の傾向のある、食べ過ぎによる胃のもたれ、急・慢性胃炎、消化不良、食欲不振、胃痛、腹部膨満感などに使われる漢方薬です。
平胃散を使う主な症状は、湿困脾胃、湿滞脾胃の症候を現わす以下のようなものです。上腹部膨満感と、べっとりと付着する厚い白い舌苔が判断基準となります。
急性・慢性胃カタル
胃アトニー
胃下垂
急性・慢性胃腸炎
胃・十二指腸潰瘍
神経性胃炎
消化不良
胃痛
胃もたれ
食欲不振
腹部膨満感
逆流性食道炎
心疾患
呼吸器系疾患
婦人科系疾患
平胃散の処方
平胃散の配合生薬は、
①蒼朮
②厚朴
③陳皮
④甘草
⑤生姜
⑥大棗
の六味です。
君薬の蒼朮は湿邪を乾燥させて除去(燥湿)して、同時に脾胃の機能を高める効果があります(健牌)。
臣薬の厚朴には気を巡らせる効果(行気)があります。厚朴の行気効果により、脾胃の機能改善と湿邪の除去が同時に進み、腹部の膨満感も解消することになります。蒼朮と厚朴は健脾と化湿の両効果を強める組み合わせです。
佐薬の陳皮は胃の機能を改善し(理気和胃りきわい)、蒼朮と厚朴の働きを助ける効能があります。甘草は使薬として益気和中しつつ、それぞれの生薬の薬性を調和する効果があります。
生姜と大棗も脾胃の機能を調える効果があります。
以上、平胃散の効能を「燥湿運脾(そうしつうんぴ)、行気和胃(こうきわい)」といいます。
平胃散の出典は宗代の医書『和剤局方』です。
平胃散の体験談・口コミ
口コミ①胃腸の調子が悪く、舌が白い
しばらく胃腸の具合が悪く、食欲不振が続いています。すぐ下痢をします。みぞおちの辺りのつかえ、吐き気や頭が重い感じもあります。舌には白い舌苔があります。
平胃散を使用して2力月ほどで胃腸の調子が良くなり、頭の重い感じも消えました。
口コミ②喘息で痰が出るので平胃散を服用
喘息で咳、痰がたくさん出てきます。痰の色は白っぽいです。舌も白っぽいです。
平胃散を服用し、1年でほとんど改善しました。
口コミ③胃痛、食後の下痢に平胃散
胃もたれが酷く、胃痛もあります。食後にはすぐ下痢をします。食事をするとお腹がゴロゴロなります。舌は真っ白です。
平胃散を飲み始めて半年たつと、症状がかなり良くなりました。
平胃散を使用した製品の例
散剤 | 平胃散(料)エキス(クラシエ薬品、三和生薬)、JPS漢方顆粒-43号(ジェーピーエス製薬)、平胃散(料)エキス(ウチダ和漢薬、三和生薬)、平胃散(ウチダ和漢薬) | |
錠剤・カプセル・丸 | 平胃散エキス錠(三和生薬)、錠剤平胃散(一元製薬) | |
湯薬 | 平胃散(料)(ウチダ和漢薬、東洋漢方製薬) |